若者よお!セックスをしろ!セックスを!

「若者よお!セックスをしろ!セックスを!」若き男女で賑わっている最中、突如として現れた全裸中年男性の怒号により、婚活パーティー会場は静寂に包まれた。

 

「今、日本は、少子化が著しく進んでいる!ただでさえ子供が少ないってのに、このコロナ禍で更に拍車がかかってる!そうだ!そのためのセックスだ!御国のためのセックスだ!セーックス!」

中年男性のボルテージに呼応するかのようにそのイチモツは怒張しきってた。

 

一方、会場内は大混乱に陥っていた。白い目で見る男もいれば、後退りする男もいれば、蔑んだ目で見る女もいれば、泣き叫ぶ女もいた。

 

主催者側は、中年男性の"排除"を試みる。日給8,000円の警備員たちが複数で、中年男性を取り押さえにかかるのだ。

 

しかし、何のこれしき。中年男性はこれらを物ともせずに、ちぎっては投げちぎっては投げ、たちまち制圧した。

 

「セーックス!」すっかり勝利に酔いしれた中年男性は、拳を天に掲げて、雄叫びを上げる。これを見た若き男女たちは、いよいよ会場の出口へと殺到していく。中年男性を震源地とする混沌が会場内を波打っていた。

 

「ええい。かくなる上は。」と主催者は警察へと通報した。通報から数分もかからずに現場に急行する警察官たち。

 

「武器を捨てろ!」中年男性に向けられた銃口の先が光る。

 

「武器、これのことか?」中年男性は奇妙な笑みを浮かべながら、自らの肉棒を優しく撫でる行為を繰り返す。

 

「貴様ァ!」遂に引き金が引かれた。

 

弾は中年男性の胸部を捉えた。

 

「少子...化...。」中年男性は絶命した。

 

一仕事終えた警察官は無線で一報を入れた後、その場を速やかに去る。その場で気絶していた警備員らも息を吹き返す。若き男女らもわらわらと会場へと戻って来る。

 

一部始終を見届けた主催者はマイクを取り、若き男女にこう声をかける。

 

「今日は最後まで楽しんで行ってください。」若き男女たちは何事もなかったかのように再び歓談を楽しむ。

 

そんな賑わいの中、さっきまで中年男性だったものは、目を開きながらドス黒い血を吹き出し横たわっている。そのイチモツはすっかり萎んでいた。

 

(終わり)