11日前にイッたウシ(ソープ・ルポ 後編)

嬢は、湯に自らも浸かっていいのか、僕に尋ねる。

こちらとしては、特に断る理由もない。

「いいですよ。」

僕は答える。

そして、嬢は入る。

当然ながら、その体積によって、僕を覆っていた液体が洪水のように溢れ出る。

お湯は半分くらいになってしまったのでないか。

ところで、このような店では、通常、湯船でのイチャイチャプレイを楽しむのが定石であるのだが、生憎、今これを書いている僕は、この辺りの記憶がまるでぼやけてしまっている。

嬢は恋人のように振舞っていてくれたとも思うし、そうでないとも思う。いや、終始甘えたような感じでいた、あの子のことだ。それなりに、カノジョ役に徹してくれていたのだろう。しかし、そんなことはどうでもいい。問題なのは、僕が全くこの辺りのことを思い出せないことだし、多分、それは僕の印象に全然残らなかったからということである。

そういう訳で、ここでは何の脈絡もなく、「ベット行く?」と囁くような嬢の誘いに僕が乗って、僕らは湯船から上がると描写させてもらう。

相変わらずサービス精神豊富な嬢は僕の身体を拭いてくれる。

ここで普通、献身的な恋人を持つ男のような気分にでもなりそうなものだが、僕はそうじゃなかった。

今後僕が年老いて、仮に老人ホームに入り、入浴介助のサービスを受けるとなった時、もしかしたら、こんなような感じになるのでは、そんなことを考え、何だか、情けない気持ちになってしまった。

ただ、僕のカタナはその思いと裏腹に、依然として屹立していた。

拭き終えると、嬢はまたまた、それをしゃぶり始める。

ダメだ。やっぱり、まったり、もったりだ。

人肌の暖かさと唾液の粘質、この二つが只々、まとわりついている感じがする。

きっと、人間の口の中に含まれるチュッパチャップスって、舐められる度に、毎回こんな感覚を味わってるんだろうな。いや、アレに性感帯がないってのは偏見かもしれないが。

そんなこんなを乗り越えて、本日の頂きに僕はたどり着く。メインディッシュの時間だ。

タオルで覆われたベットの上に、嬢は自らの小さい関取のようなカラダを横たわす。

僕はその上に覆いかぶさるように乗る。

そのあと、どうすればいいのか分からないので、嬢の乳房を揉みしだき、乳首を吸う。

これ、おっパブでやったことあるやつだ。あんまり、新鮮味がない。

ただ、とにかく、雰囲気をエロエロモードにしなくてはならなかった僕は、続ける。

すると、嬢が最初のポジショニングに失敗したのか、「もうちょっと、こっちの方にズレて」と僕に指示を出す。

なんだ、なんだ、八百長か?

そう思ったが、仕方がないので、指示通り動く。

そして、とにかく攻め続けると、僕の頭の中で一筋の稲妻が走り、あることに気がつく。


おかしい。

いくら、乳首を舐められているにしても、この人、喘ぎ声がデカすぎないか?
ネクストコナンズヒント! 嬢の芝居。)

おい、コナン、それって。

ああ、元太。犯人はアイツに違いねえ!

ギィィ!ガシャン!



しかし、武士に二言はない。一度を攻める動作をすれば、それを止めてはならない。

揉み、舐め、吸い、舌で乳首を転がす。

しばらく続けてると、嬢は「する?」と僕に尋ねる。

いよいよか。俺の「喪失」は。

マンコ分け目の戦いが膜を開ける。

とにかく不慣れであったし、僕は騎乗○をセレクトする。

武士らしくそうしたと言いたいが、武士という表現を思いついたのはお家に帰ってからなので、ここでは童貞だったからそうしたと、真実を述べておく。

嬢は僕の上にまたがる。

ぐえっ! お、重い。

そして、嬢は風船をカタナに取り付け、「初めてえ?」と甘々な声で言う。

「はい。」僕は正直に答える。

「いくよ。」嬢がそう言う。

嬢が僕の股の上に座りきると、カタナが温かい狭い空間に入ったのを僕は認識する。

こんな感じなのか〜。

そうやって、率直に感動を覚えた。

しかし、やっぱり、まったり、もったりだ。

(なんだ、こんなもんか。)

次第に、文明開化によって照らされた我が心の灯りは、消えていく。





(やっぱり、重いなぁ。)

まるで、この日のために従事していた肉体労働を想起させる。最初、重たい荷物を持ち上げる際の、一瞬ながら全身に力をこめる感じが延々と続いてるような感じだ。

(それにしても、全然チンコ、気持ちくならないなあ。これは、あれか。実は「前」でも「後ろ」でもなく、第三のアナにでも入っちゃったんだろ。そうだろ。そうだろ。そうなんだろ。なあ、誰か答えてくれよ…。)

しかし、答えくれる者などいるはずがない。

(このまま出ないで、肉体労働し続けるのは、俺も嬢も限界が来るだろうし、一発も出ないってなると、やっぱり、俺も嬢も悲しいだろ。でも、どうする。全然、気持よくない。)

(いや、そもそも、嬢になんとかしてもらおうっていうのが可笑しいんじゃないのか。どうやら、俺が気持ちよくないのは、普段のシコり方にどうやら原因がありそうだし、そうである以上、俺がナントカしなきゃいけないだろう。そうだ、こちらから、歩み寄らなきゃいけないんじゃないのか。)

(さーてと、一発、抜いちゃいますか。)

(※ここら辺から、「鬼滅の刃」のオープニングのサビの部分を脳内再生しておいて下さい。)




股間に神経を研ぎ澄まし、一つ一つの「もったり」した感じを捕らえて貯めていく。

うおー!根性!根性!根性!

とにかく、「出せ!出せ!」と股間に僕は念を送っていく。

力、情熱、念力、なんでもいい。とにかく、気持ちで出せ!

クッ!クソッ!オラッ!

すると、たちまち、カタナに火種が宿る。

そいつを逃すな!

そりゃ!そりゃ!そりゃ!

僕がこんな風に心の中で戦う中、嬢の相変わらずクソデカい喘ぎ声も終始続いている。

僕の心の中の小人たちが声を上げる。

男「うおおおおおおおおおお!」

女「いっけええええええええ!」

老師「来るぞ!」


「イキそう…。」

僕は声を漏らす。

嬢は「いいよ、出して…。」と呼応する。

発射!

で、出た・・・。

ゴムに出ているのを視認する。

その刹那、強烈な虚無感が僕を襲う。心臓の辺りが乾ききったような、そんな感覚だ。
頭もぼんやりとして、重たくなっていく。

いわゆる、賢者タイムだが、これまでに経験したことのない凄まじさだ。

幸運なことに、休憩と相成る。

飲み物を頼めると聞いたので、とにかく、アルコール類を僕は求めた。

しかし、メニューを何度も見ても、その存在はなく、渋々コーヒーを頼む。

嬢が一旦部屋を出ると、僕はベットの上であぐらをかいて、呆然としていた。

え…。何だ、これ。

僕は、ただただ、扉と天井の間を見つめていた。

そして、一言、心の中に浮かび上がる。

待ちに待った運動会の徒競走で、ビリッケツだった少年のように、

「もう、帰りたい…」と。

こうして、人生で最も悲しく、虚しい時間を過ごしていった。

嬢が戻るとアイスコーヒーを差し出す。

とにかく渇ききっていた僕は、一気に飲み干す。

「飲むの早い。」と嬢に笑われるが、僕は全く気にしない。

「マットしていく?」

嬢は、「ご飯、家で食べてく?」みたいなトーンで僕に尋ねる。

本当は、帰りたい。しかし、この人との会話は会話で後がもたないだろうからなあ…。

「はい。」

僕は答える。

「ちょっと、準備するから待ってて。」

嬢はシャワーの方に向かう。

(ここで、またまた不自然ではございますが、マットプレイまでの流れを忘れてしまったので、ここから急にマットプレイになります。)

嬢は体を密着させて、全身を洗ってくれる。

彼女はふくよかなカラダであるから、感覚は確かに気持ちがいい。しかし、錆びついてしまった僕の心にはまるでそれは響かなかった。

うおー。帰りてえ。こんな思いに僕は満たされていた。

仰向けになると、また、シゴきが始まる。こっつあんです。

ただ、やっぱり、まだまだ、もったりしている。

嬢は手で扱きつつ、僕の体全身を舌で刺激してくれる。

しかし、これもあんまりだ。

うーん、強いていうなら、乳首かなあ。

そんな風に思ったので、

嬢が「どこが気持ちいい?」と聞くと、

「ち、乳首…」と僕は、さも感じているかのような声を出して答える。

その要望に答えて、嬢は舌で乳首を刺激しながら、僕の竿を扱いてくれる。

(あー、これなら、なんとかイケそう。一発だせばいいのかもしれないけど、「氣持ちいい、氣持ちいい」って連呼してんなら、二発ぐらい出せねえと、発言の整合性とれねえよな。やっぱ、嬢もこんなに必死になってやってくれてるわけだしさ。)

そう思った僕は再び気合いを入れる。
(※ここは、鬼滅の刃の曲、いらないです。)

まず、勃ちつつも、何だかフニャっとした、僕のチンコに対して呼びかける。

「おい、起て!起て!起てって言ってるだろ、ここで、諦めんのか?諦めんのかお前は?」

運動部の熱血顧問のように激を入れる。

すると、四分の三勃ちくらいだった僕のチンポが、五分の四勃ちくらいになる。

これだったら、後は乳首の刺激との合算でなんとかイケそう。

ここでスパートをかける。

うおー!いけいけ!

とにかく、チンコに呼びかける。

チンコもそれに答えたようで、なんとか装填は完了したようである。

いつでも、出していいぞ!指揮官として、僕は命ずる。

僕のチンコ「装填完了!エネルギーチャージ!10秒前!10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。発射!」

「で、出る…。」

射精の時に発する僕のセリフは変わらない。

ビュルル

大分薄まったブツが僕の腹の上に着地したのを目撃した。

出しきると、僕の体の清掃が始まる。

嬢が洗い終えると、再び僕はお湯の中に入る。

しばらく、その場で嬢と雑談する。

最近のコロナウイルスによる経済への影響についてだった。

賢者タイムの僕にはぴったりな話題だ。

その後は、色々と話したと思うが、あんまり覚えてないし、他愛のない話だったと思うので、内容は割愛させていただく。

嬢に促されて、服を着終えた。

ただ、どういうシステムか、受付の許可がないと出られないらしい。

少し、その場で待機する時間が生まれた。

その時も、やっぱり、一刻も早くこの場から出て行きたい気持ちでいっぱいだった。

ようやく、大丈夫なのか、嬢が部屋の扉を開ける。

来た道のりを戻っていく。

二階に降りると、ボーイの方に「お連れの方をここで、お待ちしますか?」と丁寧に尋ねられたが、

この建物が早く去りたいという気持ちから、「外で待ちます。」と答えた。

2階から降りる際にも、嬢は丁寧に手を降ってくれていた。

さっさと帰りたい僕は、うっとおしさを感じたものの、プレイが終わった際には「満足しました。また、来ます。」と思ってもないような嘘をついてしまったので、嬢が消えるまでこちらも手を振り返した。

「店」の外へ出る。

あー。帰ってこれた。良かった。

とにかく、酒を浴びねば。

そう思い、近くを見渡して、コンビニを見つける。

そこで、ロング缶のサワーを買って、再び「店」の前に戻る。

その時には、友人はもう「店」を出ていた。

駆け寄って、何か言おうとするも、全く言葉が出てこなかった。

複雑な思いが、僕の心の中を駆け巡っていた。それを一つ、一つ整理して伝えるのは非常に困難だった。

「店」の辺りでラーメンを食べたりしたが、その時も賢者タイムの作用か、ボーッとしてしまっていた。

帰りの電車の中でも、上の空であった。ただひたすらとボーッとしていた。

その時に、友人たちと、この後酒を飲むか飲まないかという話をしていた。

何か、彼らに思いを伝えないとならないと直感した僕は、酒を飲みたいと申し出た。

酒をそこそこ飲んでおり尿意をもよおしてたため電車を早く降りたかったし、また、なんとなくアキバの景観をみたいと思った僕は、秋葉原駅で降りることを提案した。


駅で降り、用を済ませて、改札を通ると、いつも見たような光景が広かっていた。

思えば、中学生くらいからここに来て、変なことをしていた。

今では、ただ部屋の面積を取るだけの存在になってしまったオタクグッズをよく、この街で購入していたのである。

そんな思い出もあったので、一種のノスタルジーを感じた。

きっと、ここに来たいと思ったのは、傷ついた心を誤魔化すためだったのだろう。

早速、コンビニにまた行って、何かに取り憑かれたかのように酒を求める。今度は500ミリのロング缶だ。今思えば、酒で心の中の何かしらを洗い流したかったのかもしれない。

UDXの前で、酒を飲み、友と言葉を交わすことで、自分の今日の気持ちというのを、なんとか言語化することが出来た。

嬢がパネマジだったことがダメだったのでないかと友人が指摘したが、そうではない気がした。

僕が求めていたのは、性的な快楽などではなかったということだ。

では、僕が本当に心の奥底で欲しがっていたのは何だったのだろう。

その答えは、「愛」のようなものなのではないか。

アルコールに溺れた僕の脳みそは、ありきたりと言えばありきたりな、しかし、やっぱり、的を得ているような答えをはじき出した。

この答えを僕の脳内で言葉にした途端、僕は荒れ狂う。

どうして、今まで恋人を作るような行動をしてこなかったのか、その後悔の念で頭の中がいっぱいになる。

畜生!畜生!畜生!

絶望の闇に僕の心は覆われていく。

僕が求めていいたものが愛だとすれば、このまま僕は一生恋人なぞできないかもしれない。であれば、ソープに行く時の僕のあの気持ちはどうなる、あの望みはどうなる。

僕が強く求めたとしても、一生、手に入らないかもしれない。

そんな風に思ったのだ。

そう思った途端、金曜日の夜の秋葉原でちらほら見られた交際を楽しむ男女を目撃する度に僕はむしゃくしゃしていた。

僕が手に入らないものを、易易と見せつけるな!

僕が普段生きていてあまり感じることのなかった、嫉妬という感情だ。

紫色の禍々しい炎が僕の胸の中で終始、燃え滾っていた。



その後は、秋葉原駅で友人と他愛もない、くだらない話をしてから、電車に乗り、地元の最寄り駅についた途端、ベロベロであったのにも関わらず、「まだ、足らん」と、コンビニに寄って、おでんとアテにワンカップを飲んでいたことを記憶している。

あの時に導き出した、僕が求めてみたのは「愛」なのだという答えは正しいのか、今この文章を書いている僕には、未だに合っているかは解らない。

もしかしたら、いつもしているオナニーが激しすぎて、ソープで感じた性的快感が想像よりも下回っており、不満だっただけかもしれないし、もっと綺麗なソープ嬢であれば良かったのかもしれない。

ただ、何か今は別に答えを出す必要はないのではないか、なんとなくそう思う。

最後に、こんな結果に終わってしまったが、僕は今回ソープに行ったことを全く後悔はしていないということを述べて終わりにしたい。

終わり